女優の今田美桜が主演を務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)は現在、戦争パートを放送中。13日放送の第55回で、柳井嵩(北村匠海)ら小倉連隊が中国福建省に上陸し、今後ますます厳しい状況を迎える。制作統括の倉崎憲氏に戦争を描く思いを聞いた。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けている。
今年は戦後80年という節目の年。だからこそ、やなせさんと暢さん夫婦を題材に選んだと、倉崎氏が今届ける意義を語る。
「放送100年というより、戦後80年の方が我々の中では大事で、そんな2025年に何を題材に朝ドラをやるべきなのかという観点からしても、実際に戦地に約5年間行かれていたやなせたかしさんを候補に上げました。いろんなやなせさんの書籍を読みましたが、『ぼくは戦争は大きらい』という書籍があって、中園さんとお会いしたときにその本を出して、『戦後80年ということもあって、やなせさんと暢さんをやりたいです』という話をして。中園さんもやなせさんとの文通経験があり、やなせさんへの想いをずっと持っていらっしゃったと聞き、運命だと感じました」
また、倉崎氏は「80年経った今も世界では戦争が続いていて、日本国内でもおかしな感じになっているというのが肌感覚としてある中で、やなせさんが経験した戦争を描かないと『あんぱん』をやる意味はないと思っています。というのも、やなせさんが戦地で何よりも一番つらかったのは空腹で、それが『アンパンマン』にもつながっている要素の一つということもあって、かなり早い段階から戦争パートはちゃんと描こうという話をしていました」と思いを明かす。
「『あんぱん』のテーマの一つとして、逆転しない正義は何か、その究極が『アンパンマン』だと思いますが、戦争を経験した嵩と、戦地には行ってないけど、のぶも軍国主義が崩壊して価値観が変わっていくという、のぶと嵩それぞれにとっての正義が逆転する瞬間だったり、それを経験して、逆転しない正義は何かというところを自問自答し続けていくというのは、『あんぱん』をやるにあたって絶対に描かないといけないことでした」
戦争パートでは、嵩が所属することになる小倉連隊の上等兵・八木信之介役で妻夫木聡も登場。倉崎氏は「妻夫木聡さんも役に説得力をもたせて凄まじいお芝居をしてくださっている」と太鼓判を押し、「戦争パートは、これ『あんぱん』なのかと、別ドラマじゃないかというほど徹底して描いています。まるで一本の映画のようでもあります」と手応えを口にする。
朝の時間帯に戦争シーンを見たくないという声も覚悟の上で描く戦争。「戦後80年でもあり、やなせたかしさんを描く上でやらないといけない、絶対にやるべきことだと思って、中園さん、演出陣含め、覚悟を決めて1年以上前からやっているので、ちゃんとドラマを見ていただきたい」と語っていた。
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