前回「無断欠勤OK」の会社の話をしたが、これは単に厳しくするとすぐ退職されて困るから社員を甘やかすしかない、という話ではない。
社員が働きやすい環境を作ることで離職を防ぎ、結果的に会社の業績も伸びるというウインウインの関係作りである。
しかしこのような成功例はまだ少なく、街中ではホストクラブやバニラに退職代行の宣伝車が並びつつあるらしい。
つまり日本の労働環境はデスロード化しつつある、ということだ。
退職代行会社を使う人間が増えているのは、その方が退職手続きがスムーズという合理性だけの問題ではない。
二度と会社には足を踏み入れたくないし、貴様らのツラを二度と見たくないという「モームリ怒りの即日退職」である場合も多い。
社員と会社の分断がより深まって来たということであり、さらに今後退職代行に続き「リベンジ退職」が流行るとさえ予想されている。
Z世代の間では、リベンジ退職ってのが最新の退職トレンドなんだとか
「リベンジ」はフィクションでも未だ人気のジャンルである。
自分を舐めくさりやがったモラやビッチどもに「ざまぁ」してやりたい、というのは我々の多くが持っている願望だ。
しかし、現実として、婚約破棄やパーティ追放をされる機会は少ないし、家族を村ごと焼かれることもそんなにない。
それに近い目にあったとしても、「復讐」はさらに難しく、大体が泣き寝入りである。
だからこそ我々はリベンジを成し遂げる悪役令嬢や一見ハズレスキルの主人公に痺れ憧れ課金が止まらなくなるのかもしれない。
そんな中「リベンジ退職」は一般庶民が唯一現実で可能な復讐と言える。
そもそも「いた方が仕事が増える」という逆逸材でなければ、退職は少なからず周囲に影響をもたらす。
よって、退職したくても「自分が辞めたら周囲に迷惑がかかる」と思って退職に踏み切れない人もいるだろう。
沈むタイタニックに残って演奏を続けた楽団のような志の高さだが、結果あいつらは全滅しているので、これからも生きる予定があるならおすすめできない。
会社や他社員への迷惑を恐れて退職を躊躇する時代は終わりである。これからはできるだけ迷惑をかけてやめる、それが「リベンジ退職」だ。
リベンジ退職の基本は「繁忙期にやめる」「引継ぎをしない」「SNSに暴露」だという。
つまり「バックレ」の時点でソフトリベンジ退職にはなっている。
ただ、バックレはもう精神的に出社することが無理な状態で自己防衛のために致し方ない場合もうある。
そうではなく、元気はあるが会社に迷惑をかけるためだけに行う攻めのバックレがリベンジ退職ということだろう。
「SNSに暴露」も会社にとっては打撃になる場合がある。
数十年前のセクハラがSNSで暴露され炎上する企業さえあるのだ。
X民の辞書に「時効」などという寛大な文字はない。「昔のことだから」では済まされず、令和のコンプラ意識で裁かれ新鮮に燃えるのだ。
いつ爆発するかわからない時限爆弾的な意味でも会社にとっては脅威だ。
オーケーオーケー落ち着こう、日本では「人を呪わば穴二つ」
また、退職前に重要データを消すなどのさらにアグレッシブなリベンジもある。
自分が組んだシステムを消し去って退職される場合もあり、「本当は有能な奴をないがしろにしたせいで大変なことになる」という展開は、本当に異世界リベンジ感がある。
ただ退職前データ消去は訴訟沙汰になったこともあるらしいので、お前を殺して俺も死ぬレベルの恨みがない限りはお勧めできない。
辞めたあとのことをなど考えていたら永遠に退職できずにタイタニるだけなので、残される人間の迷惑など考える必要はない。
ただ積極的に迷惑に迷惑をかけたいという場合は注意が必要だ。
何故ならリベンジ退職がリベンジしたい相手に正しく被弾するかがわからないからだ。
ノー引継ぎや、データ消去で困るのは同じ部署のムカつく上司や同僚と思うかもしれないが、実際に困るのは全く関係ない場所から連れてこられたド新人の場合もあるのだ。実際そうなったことがある私が言うのだから間違いがない。
そして、その前例から私が辞める時は「引継ぎ3か月」という脅威の拘束時間が課せられてしまった。前任者がリベンジしたい相手が私だったとしたら必中必殺すぎるが、多分違う。
悪役令嬢もので言えば、元婚約者やビッチではなく、モブにリベンジが果たされてしまうようなもので、あまり意味がない。
「誰でもいいから困れ」という無差別テロ的発想がない場合はあまり意味がないので、腹が立つ奴は退職日に直接殴っておこう。