トヨタ自動車が通算6世代目となる新型「RAV4」を発表した。今や世界的な人気モデルとなったRAV4の歴史を振り返るととともに、2025年度中に発売となる予定の新型モデルの内容を見ていきたい。
累計販売1,500万台超の大ヒットモデル
RAV4は180を超える国と地域で累計1,500万台以上が売れたトヨタの大ヒットモデルだ。累計走行距離は地球6,000万周に達するという。
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新型「RAV4」発表会場には、1989年の「東京モーターショー」に登場したRAV4のコンセプトモデル「RAV-FOUR」をはじめ、初代から5代目までの各モデルがずらりと展示されていて、我々の目を引いた
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コンセプトモデルの「RAV-FOUR」は、「クロスオーバーSUV」という言葉が生まれる前に登場したレジャー向け小型SUVのパイオニア。都市とオフロードでの走りを両立する性能と若者やファミリー層にも受け入れられるデザインを併せ持った革新的な仕上がりで、今見ても新鮮だ。これが1994年の初代「RAV4」のデビューにつながることになる。壇上はトヨタ取締役・執行役員のサイモン・ハンフリーズ氏
RAV4の販売台数は、初代の初年度で5.3万台を記録。翌年には15万台まで急増した。2000年の2代目ではボディサイズを拡大。2005年の3代目では、最大の市場となっていた北米市場を重視してパワーアップを図った。ここまでの3代(~2012年)で累計販売台数は150万台に到達。4代目では初のハイブリッドモデル(HEV)が登場し、2018年までに米国で250万台を販売した。
5代目ではプラットフォームの刷新や先進技術の搭載でさらに人気に火がつき、2020年までにRAV4の累計販売台数は1,000万台を突破。HEVやプラグインハイブリッドモデル(PHEV)が主流となった現在では、米国だけでなく欧州や中国でも販売台数を伸ばしている。
ニッチからメインストリームへ
新型RAV4の発表会に登壇したトヨタ取締役・執行役員のサイモン・ハンフリーズ氏は、RAV4のコンセプトモデル「RAV-FOUR」について、こう振り返った。
「20世紀の最初の80年間、すばらしいカーデザインが数多く生み出されてきました。しかし1989年、東京モータショーで異変が起こりました」
そして初代RAV4については、「都市派でありつつアウトドアも自由に楽しめる。小さいにも関わらず広々としていて多目的に使える。強烈な個性がありつつ、親しみやすいクルマ。しかし、最初はニッチな商品でした」と説明した。
その後にRAV4がたどった道程についてはこう語る。
「2代目、3代目が登場する頃には、オーストラリアからアフリカ、ブルガリアからボリビアまで、世界中で受け入れられ、我々の想像以上の存在になりました。しかし、人気が高まるにつれ、そしてSUVセグメントが主流になるにつれ、RAV4は中途半端な存在になる恐れが出てきました。まるで、新たなジャンルを切り拓いた反逆のロックスターが、それがメインストリームになると埋もれてしまうように」
5代目では「日常の冒険心」にフォーカスした開発を実施。例えば「ランドクルーザー」が世界中で、「ハイラックスチャンプ」が東南アジアで、「タコマ」と「4ランナー」がアメリカで、「bZ3X」が中国でといった風に、トヨタは各地の暮らしに寄り添う自動車開発に力を入れていった。
新型は純ガソリン車を廃止! PHEVの実力は?
トヨタが2025年度中の発売を予定する新型RAV4(6代目)の開発コンセプトは「Life is an Adventure」。「6代目となる新型RAV4は、その可能性をさらに広げるため、より自信に満ち、あらゆる用途に対応でき、より効率的に、もっとダイナミックに、さらに人や社会とますますつながっていく、そんな人生という冒険がもっと楽しめるクルマに仕上げました」というのがハンフリーズ氏の説明だ。
改良型「GA-K」プラットフォームを採用したボディサイズは先代とほぼ変わらないものの、ボディスタイルは写真の通り「Core」「ADVENTURE」「GR SPORT」の3つの設定に。パワートレインでは純ガソリンモデルの設定をなくし、PHEVとHEVの2種類のみとした。
今回のPHEVモデルは、最新の第6世代ハイブリッドシステムをベースに、フロントアクスルにシリコンカーバイト(SiC)半導体を採用。SiC半導体は従来のシリコン半導体に比べ、高耐圧・高温耐性、低損失・高効率などの特徴があり、システムの小型・高効率化、駆動損失の低減が可能になる。さらには大容量の駆動用バッテリー採用やモーター出力の12%向上などにより、EV航続距離は従来の95kmから150km(開発目標値)まで約50%も延びている。
例えば、ライバルと想定される三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」は、ガソリンを使用しない「EV走行可能距離」として、多くのユーザーの1日の走行距離をカバーできる90km前後を設定している。RAV4 PHEVの150kmは、それを大幅に凌駕する数値だ。おそらくトヨタには、競合モデルとの明確な差別化を図り、優位性を確保したいという狙いがあるのだろう。
新型RAV4には「V2H」(Vehicle to Home)とDC急速充電の機能が追加となっている。これなら、普段は電気自動車(BEV)のような使い方ができるはずだ。満タン/フル充電で走り始めた際のトータルの航続距離は1,350km以上というから、東京をスタート地点にすると、ワンタンクで鹿児島まで行けてしまう。
PHEVのGRスポーツは最高出力320PSを発生。パフォーマンスダンパーや軽量ホイール、高剛性ボディなどを盛り込み、下山のテストコースで7万時間も走り込んで性能を鍛え上げたというから、これを解き放てる場所さえあれば、腕の立つドライバーも満足できるパフォーマンスを発揮してくれるはずだ。
一方のHEVも、トランスアクスル、パワーコントロールユニット、電池などの改良によってモーター出力がアップ。軽やかな出足やダイレクトな駆動レスポンス、シームレスな加速感が味わえるようになったという。