ミネベアミツミグループのエイブリックは11月12日、電気自動車(EV)やe-Bikeなどの車載用3~6セルバッテリー監視IC「S-19193シリーズ」の販売を開始したことを発表した。
EVなどで用いられるバッテリーマネジメントシステム(BMS)には、自動車用機能安全規格であるISO26262に準拠した機能安全への対応が求められるが、従来はフェイルセーフの観点での機能安全を達成するための手法として、マイコンと共に高機能なアナログフロントエンド(AFE)を組み合わせて、車載バッテリーの過充電・過放電状態を監視する手法が一般的であった。この場合、車両を安全に停止させた後のバッテリーの監視までは求められていなかったが、自動運転技術の進化に伴い、トラブル発生時であっても、ドライバーではなくシステムがトラブルに対応するケースが増えることが予想されており、故障発生時であっても運転を継続できるフェイルオペレーショナルやフェイルデグレーデッドの重要性が高まってくると考えられている。
同シリーズは、そうした将来ニーズへの対応を目指してSO26262に対応した開発プロセスで開発された製品で、車載バッテリーの過充電(2.50V~4.50V±20mV)と過放電(1.00V~3.00V±80mV)の監視機能を備えていることから、従来の監視系(プライマリ)が故障した場合であってもセカンダリとしてバッテリーを継続的に監視することが可能となり、フェイルオペレーショナルやフェイルデグレーデッドにも対応した、より安全性の高いBMSが実現できるようになるという。
また、このセカンダリ監視はプライマリ監視から完全に独立させることが可能なため、共倒れリスクを回避することができるとするほか、マイコンによる制御が不要なスタンドアロン動作のセカンダリ監視回路を構成することも可能であるため、設計上の工数軽減にも貢献するとしている。
なお、同社では、同シリーズを用いたBMSの機能安全設計をサポートすることを目的としたSafety Manualのダウンロードが可能な状態にあるとしている。また、同シリーズについては米自動車工業会(AIAG)が定めるPPAP(Production Part Approval Process:生産部品承認プロセス)に対応しており、車載ICの品質規格であるAEC-Q100 Grade1にも対応予定だとしている。