Intelは2月28日(米国時間)、同社ファウンドリ製造担当エグゼクティブバイスプレジデント兼最高グローバル業務責任者兼ゼネラルマネージャーであるナガ・チャンドラセカラン氏のメッセージとして、米国オハイオ州で建設が進む新工場の稼動を2030年以降に延期すると社員向けに通達したことを明らかにした。
それによるとオハイオ新工場のMod 1(第1棟)の建設完了は2030年で、2030年から2031年の間に稼働を開始。Mod 2(第2棟)は、2031年に建設を完了し、2032年の稼働開始予定としている。当初の計画ではMod 1は2025年稼働開始であったので、5年以上延期されたことになる。
同氏は「(Intelの製造部門である)Intel Foundryに対して顧客の需要があれば、作業を加速し、運用を開始できる柔軟性を維持しながら、建設を中断することなく、ゆっくりとしたペースで建設を続けていく」と述べているが、プロセス開発の遅延などから顧客獲得が思うように進んでいないことが背景にある模様である。
現在、同社は収益性の回復に苦戦しており、大きな支出が必要となる工場建設と製造装置の購入を遅らせることで、資本支出を削減しようと考えているとみられる。
オハイオ新工場への投資は280億ドルが予定されている。バイデン前政権は同工場を含むIntelの米国内工場に対して総額78億6500万ドルの補助金支給を決めており、すでにその一部が支払い済みで、今後も建設の進捗に合わせた形で段階的に支払われる予定だが、支払条件の1つに建設労働者や工場労働者の雇用促進が入っているため、建設を中止できない事情がある模様である。工場労働者の雇用に関しては、「すでにオハイオ州の人々がアリゾナ州、ニューメキシコ州、オレゴン州のファブでトレーニングを受けており、引き続き採用を続ける」と同社では説明しているが、補助金の支給中止を避けるために、解雇できない事情があるようだ。
米国メディアからは、米政府の要請でTSMCやBroadcomがIntelの支援をするような噂が出ているが、当事者たちはコメントを避けているので、真相はやぶの中である。
CHIPS法による補助金支給はどうなる?
トランプ大統領は、大統領就任前からCHIPS法に基づく補助金支給を税金の無駄使いとし、「関税を上げるだけで海外企業は米国内で製造せざるをえなくなる」と繰り返し主張してきた。
米国商務省は、CHIPS法に基づく補助金支給決定の発表をトランプ大統領就任直前の1月17日を最後に止めた。バイデン政権下で商務長官を務めてきたジーナ・レモンド氏(民主党)をはじめとする幹部は、新大統領の就任とともに退任しており、今後、CHIPS法に基づく補助金支給がどうなるかは不透明感が漂っている。
米国連邦議会上院は2月18日、新たな商務長官に対中強硬派で高関税支持者の実業家ハワード・ラトニック氏とする人事を賛成多数で承認した。同氏は、CHIPS法を「素晴らしい頭金だ」とする一方で、見直す必要があると述べていると米国メディアが報じている。
Intelの米国新工場の稼働が補助金支給にもかかわらず遅れることで、半導体製造の国内回帰を目指す米政府の戦略も見直しが迫られるかもしれない。