日本ヒューレット・パッカード(HPE)は3月27日、オンラインで2月に発表した新サーバ「HPE ProLiant Compute Gen12」に関する説明会を開催した。

分散型のIT環境に対するHPEの打ち手

冒頭、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 デジタルセールス・コンピュート事業統括本部長の加藤知子氏はProLiantの歴史について触れた。

  • 日本ヒューレット・パッカード 執行役員 デジタルセールス・コンピュート事業統括本部長の加藤知子氏

    日本ヒューレット・パッカード 執行役員 デジタルセールス・コンピュート事業統括本部長の加藤知子氏

ProLiantは1993年に初代が登場して以来、30年以上が経過し、現在では当たり前に使われているx86サーバを最初にPCの技術をサーバ化したのはHPE(当時はCompaq)だ。その後もハードウェアRAID、管理プロセッサの標準搭載など業界に先駆けて実装してきた。

2012年に自動サーバをキーワードにマニュアルの削減やダウンタイムの最小化を実現することを目的とした技術を盛り込んだ「Gen8」、2017年にはセキュリティを最重要課題とし、業界初となるSilicon Root of Trustを実装した「Gen10」をリリース。2022年にクラウド型の運用管理ソリューションを実装した「Gen11」を発売した。

  • ProLiantの変遷

    ProLiantの変遷

加藤氏は「ProLiantは多様化する市場や顧客ニーズ、複雑化するIT環境の変化に合わせて開発、進化してきた。昨今、社会やビジネスが急速にデジタル化する中でハイブリッドクラウド、エッジ、AI、データ活用などの要素が互いに結び付くなど、分散型のIT環境に大きく変化している」と述べた。

ハイブリッドクラウドでは90%以上の企業がオンプレミスに加え、複数のクラウドを活用しており、さまざまなベンダーやクラウドが混在する環境において、いかにシームレスに連携し、シンプルに管理・運用できる機能提供が求められている。

また、エッジでは従来はすべてのデータをデータセンターあるいはクラウドにあげて処理していたが、現在では企業が管理するデータの50%以上がデータセンターやクラウドの外側で作成・処理されているという。

そのため、セキュアかつ堅牢なコンピューティングシステムが必要となるほか、AIとデータ活用のトレンドが加わり、機器・製品そのものの性能向上と電力効率の両立が不可欠となっている。

昨年、同社が実施した調査において企業ではセキュリティの脆弱性、システム運用の可視性とタイムリーな洞察の欠如、新たなユースケース・ワークロードへの対応、エネルギー効率や運用コストなどの非効率性が課題になっていることが浮き彫りになった。同氏は「今後、業務・システムの可視化、一元管理を可能とするプラットフォームや機能、自動化が重要になる」との見解だ。

進化したHPE iLO 7でセキュリティを強化

こうした企業の課題に対して、同社ではGen12により解決を図り、支援していくというわけだ。Gen12については日本ヒューレット・パッカード デジタルセールス・コンピュート事業統括本部 コンピュート製品本部 本部長の林亜樹子氏が説明に立った。

  • 日本ヒューレット・パッカード デジタルセールス・コンピュート事業統括本部 コンピュート製品本部 本部長の林亜樹子氏

    日本ヒューレット・パッカード デジタルセールス・コンピュート事業統括本部 コンピュート製品本部 本部長の林亜樹子氏

Gen12の特徴は、一歩先を行くセキュリティによる「安心」、一歩先を行く性能・電力効率の「最適化」、一歩先を行くAI主導の運用管理を実現する「自動化」の3点だ。

  • Gen12の特徴

    Gen12の特徴

セキュリティについては、サプライチェーンの脅威に着目した前述のSilicon Root of Trustに加え、強固なセキュリティを実装し、HPE iLO 7(Integrated Lights Out)は同社が独自に設計したSecure Enclave(セキュアエンクレーブ)で強化された専用セキュリティプロセッサを備える。

林氏は「iLOが管理の自動化を実現するための心臓部。iLO 7内部に独立したプロセッサとして暗号キー、パスワード、セキュリティ構成、ファームウェアなどの保管庫として機能するSecure Enclaveを実装し、改ざんや攻撃からシステムを守る新たな防御層となり、特許を取得している」と説明した。

  • Gen12は強固なセキュリティを実装

    Gen12は強固なセキュリティを実装

Secure Enclaveは、米国政府が定めるコンピュータセキュリティ標準である連邦情報処理標準(FIPS)の認証「FIPS 140-3 Level 3」の要件を満たすとともに、耐量子暗号に対応している。

  • Gen12は強固なセキュリティを実装しているという

    システムの多層的な防御を実現している

性能・電力効率とAI主導の運用管理

性能・電力効率に関しては、AIをはじめとした高負荷ワークロードの急拡大に対し、電力効率をGen10の7台を1に集約し、電力を65%削減。同氏は「データセンターのスペースを削減できることから、サーバを多く持つユーザーこそメリットを享受できる」と話す。

  • 電力とスペースの削減を実現

    電力とスペースの削減を実現

また、機種はAI向けのすでに販売中の「DL380a」「DL384」、TCO(総所有コスト)/電力に適した「DL320」「DL340」、高集約型の「DL360」「DL380」、SMB/エッジ向けの「ML350」、ブレード型の「HPE Synergy 480」、今夏に販売予定のビッグデータ向けの「DL580」の計9モデルを用意し、ワークロードに合わせて性能・電力を最適化するとのことだ。

  • Gen12はワークロード合わせて性能・電力を最適化する

    Gen12はワークロード合わせて性能・電力を最適化する

さらに、1ソケットと2ソケットのIntelベースのラックサーバでは、高負荷ワークロードに対応するため、DLC(Direct Liquid Cooling:直接液冷)オプションがあるほか、液体は空気よりも効率的に熱を除去することから除熱効果があるという。

AI主導の運用管理について林氏は「サーバ運用の効率とコストに伴うコンピュートの使用率、電力使用、関連情報のタイムリーな洞察は運用を改善するための意思決定能力に影響する」と指摘。

同社のクラウドベースのサーバ管理ツール「HPE Compute Ops Management(COM)」はサーバ環境のセキュリティ確保と自動化を実現することで「管理のための管理」から解放するとしている。サーバの設置場所を問わず、最小限の手間で展開が可能なほか、どこからでもアクセスできることから、管理サーバの構築、メンテナンス費用・工数を別の業務に投資することが可能。

  • 「HPE Compute Ops Management(COM)」の概要

    「HPE Compute Ops Management(COM)」の概要

加えて、AIによりエネルギーとCO2排出量のAI予測分析を実装し、将来のエネルギーコストとCO2排出量を予測することができるという。過去のデータを分析してサーバの使用率を予測することでエネルギーと排出目標の達成を支援するとしている。

  • COMにはエネルギーとCO2排出量のAI予測分析を実装

    COMにはエネルギーとCO2排出量のAI予測分析を実装

これらのほか、同社ではアドバイザリー&プロフェッショナルサービス、サポートサービス、ハイブリッドクラウドプラットフォーム「HPE GreenLake」、アセットアップサイクリングサービスなども提供する。

HPE ProLiant Compute Gen12の提供体制・販売施策については、早期に検証したい顧客に向けてHPE Solution Centerでの検証環境の提供や検証用機材を貸与し、顧客向けイベントを実施する。また、AI促進のパートナーエコシステムを活用し、販売パートナー向けセミナーやトレーニング、Gen12やCOMの導入効果に関する試算ツールを提供。なお、すでに日本国内で生産しており、オンラインストア「HPE DirectPlus」で販売している。

林氏は最後に「HPE ProLiant Compute Gen12は、セキュリティ、効率、性能を新しいレベルに引き上げて、先進的な機能を提供する。現在と将来の脅威からシステムを守るセキュリティ、性能とエネルギー効率をワークロードに合わせて最適化し、AI主導の洞察・予測分析でビジネス効果に貢献する自動化技術を享受してもらい、DX推進やAIの利活用を支援していく」と意気込みを述べていた。