J-オイルミルズは6月9日、大阪大学(阪大)大学院 工学研究科の東森充教授と共同で開発した、ヒトの咀嚼過程を再現する「咀嚼シミュレータ」に、液体を添加する新機能を搭載し、“口どけ感”の可視化を可能にしたことを発表した。
唾液を含む咀嚼を再現し食品の“口どけ”を再現
食品のおいしさには、味や香りだけではなく、歯ごたえ・弾力・舌触りなどの食感が大きく影響するため、食感を定量的に評価することは食品開発において重要となる。しかし、従来行われてきた食品の硬さや弾力を測定する力学試験では、咀嚼初期(数噛み程度まで)の物性しか計測できないため、ヒトの咀嚼過程で変化するさまざまな食感が評価できないという課題が残されていた。
おいしさを創造する企業として「おいしさデザイン」を使命に掲げ、油脂製品のほかテクスチャ素材(でんぷんなど)の製造・販売を行うJ-オイルミルズは、阪大大学院 工学研究科とともに、食品の評価に重要となる咀嚼の全工程(食べ物を歯で噛む→すりつぶす→舌で唾液と混ぜ合わせる→整えてまとめる)を評価するため、2018年から共同研究を開始。従来の装置では再現が難しかった、咀嚼の最終工程である“整えてまとめる”機能を有する咀嚼シミュレータを開発したことを2024年3月に発表していた。
そして今般、同装置に唾液を再現する液体(今回は水が用いられた)を加える機能を追加したとのこと。これにより、クッキーのような低水分食品が口の中で溶けていく変化を、ヒトの口腔内に近い条件で再現し、一般的な装置では評価が難しかった咀嚼中後期の“口どけ”について、力学データと画像データの両方で評価できるようになったとする。
今回の発表に際し、阪大大学院の東森充教授は、「今回開発した咀嚼シミュレータが、おいしい食品・安全な食品の開発の一助となるとともに、食品科学と機械工学の融合分野の発展に繋がれば幸いです」とコメント。またJ-オイルミルズは今後、今回の成果を同社製品の販売拡大やテクスチャ素材開発につなげるほか、食品評価の質向上に貢献するため、さまざまな業界との連携を進めるといい、使命として掲げる“おいしさデザイン”で「食べる」と「つくる」の課題に向き合い、より良い社会の実現に貢献するとしている。