NTT東日本は6月3日、10ギガ光ブロードバンドサービス「フレッツ 光クロス」に、法人向けの新たなサービスとして、「フレッツ 光クロス Biz」を追加した。
これまで同様、通信速度の最大は10Gbpsだが、10Mbpsの帯域確保やサービス品質保証(SLA)、24時間以内故障駆けつけサービスを付加した、より稼働率を重視した顧客向けのサービスとなっている。
品質保証は、故障により(災害や顧客起因のよる故障は除く)、稼働率が99.99%を下回った場合に、料金を減額するというものだ。
5月9日に行われた同社の2024年度の決算説明会においても、代表取締役社長の澁谷直樹氏は、光サービスの拡大を戦略として挙げ、「フレッツ 光クロス Biz」にも触れた。そうした意味で、「フレッツ 光クロス Biz」は、法人ビジネスの成長向けた、期待のサービスとなっている。
そこで、同サービスを開発した、NTT東日本 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 基盤ネットワークサービス担当の久保田弘太氏、岡寛之氏、桶谷晃平氏にサービスの特徴と狙いを聞いた。
「フレッツ 光クロス Biz」の特長とは
「フレッツ 光クロス Biz」の開発の狙いを教えてください

NTT東日本 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 基盤ネットワークサービス担当 久保田弘太氏
久保田氏: 既存で提供しているフレッツ光のオフィスタイプは、24時間出張修理のオプションが付いているため、故障時も対応できるというお客様が安心して利用できるサービスにはなっています。ただ、競合では帯域確保が一部区間で付いていたり、SLAで使えない時間があれば返金したりする競合のサービスもあります。こうしたサービスにオフィスタイプのみで戦っていくというのは厳しい側面があり、今回の新サービスを開発しました。

NTT東日本 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 基盤ネットワークサービス担当 岡寛之氏
岡氏: 昔からVDSLは遅いといわれており、それを光化する取り組みをこれまでやってきました。また、医療分野は、回線がつながらないと生命にかかわる可能性もあるので、稼働率を気にされるお客様がいらっしゃいます。そういうお客様の声を聞いて実現したサービスがBizになります。駆けつけサービスには人件費や返還コストもかかりますが、標準機能として提供することにしました。
SLA(サービス品質保証)を気にされるユーザーは多いのでしょうか?
久保田氏:市場調査を行ったところ、99.99%という保証があるとありがたいというユーザーがいましたので、機能が落ちないよう極限までがんばるサービスにしました。
帯域保証があると、専用線のようなサービスに感じますが
久保田氏: 10Gbpsをシェアして使うベストエフォートサービスのため、帯域保証ではありませんが、収容局の光回線終端装置とお客様の光加入者線端局装置の間は、帯域確保の10Mbpsを下回らないサービスになっています。
「24時間以内の駆けつけ保証」の機能強化についてお聞かせください
岡氏: 当社は、お客様の声を聞いてサービス開発に生かす形で、CX(Customer Experience)向上に取り組んでいます。その中で、24時間出張修理オプションの契約者から、業務上重要な回線であるため、早期(24時間以内)に駆け付けて欲しいという要望を多くいただいておりました。
そういうお客様の声を聞いて実現したのが「駆けつけ保証」です。24時間以内に駆け付けられなかった場合の利用料の返還コスト等が生じますが、万が一の故障時にもお客様が安心してサービスを利用いただけるように、既存契約者に対しても基本機能として提供することにしました。
どんなユーザーや業種を想定していますか?
久保田氏: 特定の業態をターゲットに据えることなく、幅広く売っていきたいと思っています。医療や建設業界のうち、クラウドサービスを現地で使っているお客様には、事前の調査の時点で興味をいただいています。
「フレッツ 光クロス」の法人向けサービスには、「フレッツ 光クロス オフィスタイプ」がありましたが、こちらとの違いを教えてください。
久保田氏: 違いは2つあります。1つは、収容数を絞っているので、一人あたりの帯域の割り当てが、Bizはオフィスタイプよりも大きな設計値となっていることです。もう1つが、10Mbpsを最低限保証している点です。
重点施策である光回線の事業戦略とは
2024年度の決算説明会で、澁谷社長が光回線を重点施策に挙げていましたが、光回線に対する戦略をお聞かせください。
久保田氏: 原点回帰で光回線に注力していくことを掲げており、Bizを今年の目玉商材として販売していきたいと思っています。これまでは、マスと法人に注力して販売も好調でしたが、SMBやSOHOは他社に流れているところもあるので、そこを確実に取り組んでいくという想いから、競合と比べてかなり安くしています。
どのような販売施策を予定していますか?
久保田氏: インバウンドプロモーションを打って、お客様に入って来てもらうのがメインですが、アウトバウンドも予定しています。医療やギガスクールなどの販売チャネルを持っていますので、これらも活用したいと思っています。
インバウンドでは、これまで注力してこなかった分野に力を入れていくことを考えています。新規獲得にまずは取り組み、その後既存のネクストユーザー等からのアップグレード提案を進めていきます。
最近は、マンションで専用線を一括契約して住民でシェアするケースも増えていますが、そういったところもターゲットになってきますか?
久保田氏: マンションISP等のミドルB事業者からマンションにも売りたいという声をいただいています。提供形態は検討が必要ですが、マンションにもニーズはあると思いますので、提供を検討します。
光回線の拡大に向けた施策を教えてください。

NTT東日本 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 基盤ネットワークサービス担当 桶谷晃平氏
桶谷氏: これまで主に1ギガの回線が拡大してきましたが、最近はマスユーザーを含めて10ギガ化のニーズが大きくなっています。そこで、今回のBizの発売を契機に、法人向けのプロモーションを実施し、法人ユーザーの10ギガ化をどんどん進めていきたいと思っています。
あわせて、無線のアクセスポイント、情報システムの専任の方がいない企業向けのお困り事をサポートする「Nにおまかせ!ITサポート」といったサポート系のサービス、社内の共有作業を可能にする「コワークストレージ」などのクラウド関連サービスも提案していくことを考えています。