本連載では、『プログラミング言語恐怖症』の筆者が、サイボウズが提供するノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」を使って気ままに業務アプリを作り、それを紹介している。

前回は、2025年以降に行われたkintoneの主なアップデート情報を紹介した。その中でも個人的に印象的だったアップデートは、kintoneに生成AI機能が搭載されたことだ。kintoneの開発中のAI機能をβ版として無償で試供できる「kintone AIラボ」が4月15日に発表され、AIと対話しながらアプリが作成できる機能などが搭載された。

  • kintone×AI機能のイメージ

    kintone×AI機能のイメージ

これはぜひ実際に使ってみたい。今まで以上に“シュシュッと”アプリを作れそうだ。そこで最終回である今回は、「kintone AIラボ」で提供されている「アプリ作成AI」を活用して、AIと会話をしながらアプリを作ってみようと思う。

作業できるカフェを編集部で共有したい!

アプリ作成AIは、AIと対話しながらアプリの作成に欠かせない「フォーム」の作成を進められる機能だ。アプリを「はじめから作成」する際に、実現したい業務ややりたいことを伝えると、AIが最適なフォーム設定やアプリ名を提案してくれる。

まず、AI機能を利用するためには、ナビゲーションバーの歯車マークに表示される「kintone AI管理」から設定ページを開き、AI機能全体や、個別機能を有効にする必要がある。なお、kintone AI管理ページを設定できるのはkintoneシステム管理者のみだ。

設定が完了すると、アプリの作成画面の右上に「AI」と書かれた紫色のボタンが現れる。これで準備はOKだ。

  • 「はじめから作成」時のフォーム画面にAIボタンが現れる

    「はじめから作成」時のフォーム画面にAIボタンが現れる

さて、何のアプリを作ろうか……。最終回なので読者の皆さんに「おぉ!こりゃすごい」と言わせられるような素晴らしいアプリを作りたいところだが、筆者は張り切ると迷走してしまうタイプなので、背伸びせずに等身大のアプリを作ろうと思う。

そこで、ふと思いついたのが、編集部内で「カフェ」や「ファミレス」などの飲食店の情報を共有するアプリ。「いやいや、いくら何でも等身大すぎるだろう」と、ツッコミたくなる気持ちは分かるが、どうかこのページから離脱しようとしているその手を止めてほしい。

読者に届ける情報は“鮮度”が命だ。つまり、記者には「記事をいち早く書くこと」は欠かせない。

記者会見や発表会を取材した際、会社に戻るまでの時間が惜しいので、会場近くのカフェやレストランに入って記事執筆や動画編集を行うことも少なくない。

しかし、急いで入ったカフェが満席で入れなかったり、入ったカフェにPCを充電するためのコンセントやWi-Fiがなかったりする場合もある。「なんでここの『スターバックスコーヒー』にはコンセントが3つしかないの……?」と心の中で悪態をつくこともしばしば。

このアプリで実現したいのは、編集部メンバー全員の経験を借りて、ちょっとした作業をする際に使えそうなカフェやレストラン、ワークスペースの情報を共有することで、「情報をいち早く読者に届ける」ことを後押しすることだ。

……というのが、真面目なアプリ開発を装うための“かりそめ設定”で、簡単なアプリをそれっぽくみせるための言い訳だ。何はともあれ本題は「kintone×AI」なので、さっそくAI機能を使ってアプリを作ってみよう。

AIを使ってアプリを作成してみる

右上にある「AI」ボタンをクリックすると、「どんなアプリを作りたいですか?」といったことが書かれたテキスト入力できるページが現れた。筆者はこれを「アプリ相談窓口」と呼ぶことにしよう。

  • 「AI」ボタンをクリックするとブラウザの別タブで「アプリ相談窓口」が開く

    「AI」ボタンをクリックするとブラウザの別タブで「アプリ相談窓口」が開く

アプリ相談窓口で「カフェやレストランの情報を共有するアプリが作りたいです」と入力すると、「あなたの業務に寄り添ったアプリを作成するため」と、いくつか質問が返ってきた。

  • アプリの要望に対して質問を返してくれる

    アプリの要望に対して質問を返してくれる

先述した「アプリを作る目的」と「共有したい事項」を詳細に伝えると、AIが最適だと判断したアプリの仕様とアプリ名を提案してくれた。

  • アプリの仕様とアプリ名を提案してくれる

    アプリの仕様とアプリ名を提案してくれる

「この“指示書”通りにフィールドをドラック&ドロップして設定していけばいいのか」と感心していると、回答文の下部に「この内容をフォームに反映」というボタンがあることに気付いた。期待を膨らませて、おそるおそるクリックしてみると、ぱっと自動でさまざまなフィールドを反映してくれた。

  • 「この内容をフォームに反映」をクリックすると…

    「この内容をフォームに反映」をクリックすると…

  • 自動でフィールドを追加してくれた

    自動でフィールドを追加してくれた

「え、何これ、めっちゃ便利じゃん……」と思わず独り言をつぶやいてしまった。それくらい便利だ。これまでもサクッとアプリを作ることができたが、さらに簡単に作れるようになっている。

「備考」や「電話番号」など、必要のないと感じた項目を削除して少し調整すれば、求めていたアプリが完成した。特に指示していない「営業時間」や「店舗画像」といった「確かにその情報共有した方が便利かも」と思える項目も追加してくれていて、かゆい所に手が届く機能だと実感。

実際に完成したアプリのレコード画面がこちら。業務に関係ないが、筆者は「誰かがおすすめするもの」が好きなので、「おすすめメニュー」という項目もついでに追加しておいた。

  • 実際に完成したアプリのレコード画面

    実際に完成したアプリのレコード画面

「検索AI」でさらなる効率化を!

kintoneに搭載されたAI機能は「アプリ作成AI」だけではない。アプリ内のデータを活用してAIがチャットボット形式で回答してくれる「検索AI」という機能も搭載された。アプリのレコードに蓄積されたデータを活用し、利用者の質問に対してAIが回答するチャットボットを作成できるというのだ。

  • 検索AIの仕組み

    検索AIの仕組み

これにより、例えば社内システムの利用手順や社内規定などをアプリに蓄積しておくだけで、AIが利用者にシステムの使い方や申請方法を自動で案内するシステムなどを構築できる。

今回作ったアプリを例に挙げると、「渋谷駅周辺でコンセントがあるカフェを教えて」と入力すれば、カフェの一覧を出してくれそうだ。今後データがどんどんたまれば、活用しようと思う。

  • 検索AI(活用イメージ)

    検索AI(活用イメージ)

ちなみに、これらのAI機能はkintoneのスタンダードコース(アカデミック・ガバメントライセンス、チーム応援ライセンスを含む)、ワイドコースを契約しているユーザーのみ利用できるらしい。

システム開発の知識がなくても業務アプリをつくれるkintone。AI機能の搭載により、さらに便利になり、初心者や専門知識がない人でも活用できるツールへと進化し続けている。まだ使っていないkintoneユーザーにはぜひ使ってみてほしい機能だ。